『夢中さ、きみに。』の舞台は男子高校。ミステリアスな魅力を持った「林美良」を主人公にした4編と、中学生の時にモテすぎた反動で不気味キャラを装っている「二階堂明」を主人公にした4編の、全8編の短編集。作者は『カラオケ行こ!』や『女の園の星』でも知られる、和山やまさん。「THE BEST MANGA 2020 このマンガを読め!」で第1位となったり、なにわ男子の大西流星さん主演でドラマ化されたりと、かなり話題になったので、読んだ方も多いのではないでしょうか。ドラマチックな恋愛や、高校同士の抗争事件といった派手なストーリーはまったく展開されません。日々を淡々と生きるマイペースな主人公を中心に、クスッと笑える瞬間がみずみずしく描かれています。
林美良
前半4編の主人公。とらえどころがない人。浮世離れしている人。何を考えているのか、どこを見ているのか、よくわからない。でも何か気になる。そしてイケメン。共学だったらモテてしまうのでしょうが、男子校だと「ちょっと変わった奴」くらいの感じです。僕も男子校でしたが、こういう奴いました。林君の具体的な行動はネタバレになってしまうのでここでは書きませんが、彼のパーソナリティが滲み出ているセリフがこちらです。
無駄なことするのって
なんか…いいでしょ
うまくいえないけど無駄なことできるほど
自由な時間がある
っていうのがなんか…
心地いいんだよ心に余裕があるうちは
意味のないことをしていたいんだきっと今しか
できないじゃない[かわいい人]より
深いですよね。僕も若い頃、無駄なことをしている時ほど楽しかった思い出があるのですが、その頃は、それがなぜ楽しいのか言語化できませんでした。きっとこういうことなんだと思います。林美良。高校2年生ですが、内面はかなり成熟しているのかもしれません。そしてくどいようですがイケメンです。
二階堂明
後半4編の主人公。ジメジメした不気味なオーラを放っている。二階堂と目が合うと金縛りにあう、二階堂と体が触れたらその人も二階堂になる、二階堂と口をきいたらテストの解答欄の記入がひとつズレてしまう、といった噂が広まり、気味悪がって誰も近づかない。僕の高校時代も、ここまで極端ではないけれど、地味で不気味なキャラの人っていました。でも男子校だと「ちょっと変わった奴」くらいの感じで、そういう人に限って意外な特技を持ってたりして、それなりにリスペクトされていたりしました。さて、二階堂君のセリフで印象的だったのがこちら。
誰からどんな話を聞いたか
知らないけど
変な虫が寄ってくる
くらいなら嫌われているほうが
ずっとラクで良いんだもう‥‥
面倒だよ色々[うしろの二階堂]より
二階堂君、中学の頃はメチャメチャモテていたのですが、ある出来事がトラウマとなり、高校では陰気キャラを装っているのでした。イケメンにはイケメンなりの苦労があるんでしょうね。知らんけど。そんな二階堂君、あらゆる生徒から気味悪がられていますが、前の席に座っている目高君だけは興味を持って近づいてきます。初めは嫌がる二階堂君ですが、いつしか二人の間に生まれるほのかな友情に、爽やかな感動を感じました。二人とも、ナイスガイです。
爆発力ではなく持続力。
淡々じわじわ系、とでも言いましょうか。淡々としたストーリーを読みながら、じわじわと笑いが込み上げてくる感じ。和山やまさんの尋常ならざる力量を感じるのですが、その力は、爆発力ではなく持続力。彼女の笑のセンスと、人間観察力のなせる業なのだと思います。読み終わったあとも、爽やかな風がずっと吹いている感じです。まだお読みでない方、おすすめです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。あなたの人生にとって少しでもプラスになる情報をお届けできたらうれしいです。ではまた。

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