企業の若手社員向けの講義に、講師として呼んでいただくことがあります。講義のテーマは担当者の方と相談して決めるのですが、その打合せでよく聞くのが「成長実感を感じられなくて悩んでいる若手が多い」という話です。
とてもよくわかります。なぜなら自分がそうだったから。僕の場合は、ウケたい、モテたい、賞とりたい。そのためにめっちゃ成長しなければというモチベーションでした。ところがコピーライターになって数年間は、来る日も来る日も、打合せに出す山のようなコピーが瞬殺され、先輩がその場でささっと書いたコピーで仕事が進んでいく。成長実感どころか、俺この仕事向いてないかも、と悩む日々でした。同期と話すと、テレビ局とCM枠の交渉をしてるとか、クライアントの雑誌広告の仕事を任せてもらってるとか、海外の広告賞をとったとか、これぞ電通という仕事をしている人ばかり。みんなめちゃめちゃ活躍してるじゃん。それにひきかえ俺って何なのと落ち込んでいました。そんな感じの若手だった僕がいま、若手のみなさんに伝えられることとは?しかも広告業界に限らずどの業界にも通じる普遍的なこととは?あれこれ考えた末に、「成長実感はクセモノである」という話をよくするのですが、これがとても反響が大きいのですね。成長実感で悩んでいる人のいかに多いことか。講義では、だいたい3つのことをお伝えするようにしています。
①「成長」と「学習」を混同しないように。
自分以外の同期がキラキラ活躍していてグングン成長しているように見えても、彼らは単に学習しているだけという場合が多いです。あまり焦る必要はありません。学習とは主に、先輩から教わったことが上手にできるようになったということ。先輩がやってきたことを、先輩の代わりにできるようになったということ。九九を覚えて計算が早くなるのと本質的に同じです。学習は組織人としてもちろん大切なことですが、それと成長は別物である。というのが僕のスタンスです。学習は必要だが、それができたからといって組織にとって社会にとって必要不可欠な人材であるとは言い難い。つまり学習しただけの人は、代えが効く人材なのです。代えの効かない価値ある人材になるためには、その組織にとって必要な知識や技術を「学習」したうえで、自分なりの「成長」を実現すること。「学習」の先に「成長」がある。自分はいま「学習フェーズ」にいるのか、「成長フェーズ」にいるのか、そこに自覚的であることが大切です。
②苦しいときの試行錯誤こそ最高の成長期会。
オンボーディングの概念が広まった最近では、「学習フェーズ」がそれなりに整備されている組織が増えてきたのではないでしょうか。先輩は教えてくれないから見て盗むしかない、ということでは、若い人は辞めてしまう時代ですからね。でも問題なのは学習フェーズのその先、もしくは僕の若手コピーライター時代のように学習フェーズが整備されていない場所に放り込まれた時です。そこには苦しい時間が待っています。「今回のプロジェクトで君の役割はこうです」とか「明日の打合せにこういう資料を持ってきて」と言ってくれる優しい先輩はいませんから、「今回のプロジェクトで自分は何をすればいいのか?」「明日の打ち合わせに自分は何を出せばいいのか?」といちいち考えながら仕事をしなければなりません。めちゃめちゃ疲れる。しかもそれが全然芯を食わず、周りから「こいつ何のためにいる人なの?」という目で見られて肩身の狭い思いをしたりする。学習フェーズに慣れた体には相当な負荷になりますが、この「自分は何をすればいいのか?」という試行錯誤、別の言い方をすれば「仮説を持ってあらゆるシーンに臨むこと」こそが、最高の成長期会です。仮説を持って仕事に臨むと、うまくいけば仮説が正しかったことになりますし、うまくいかなかった場合は仮説が間違っていたことがわかるので、次から別のやり方を追求することができます。これを繰り返しているうちに仮説のセンスが磨かれ、この仕事どうやって進めればいいんだろうと誰もが困っている状況で、仕事を前進させる一手を提供できるようになるのです。これは社内の打合せだけでなく、クライアントに対するプレゼンテーションでも同様です。このクライアントに対して、うちの会社は何をすればいいのか?自分は何をすればいいのか?そんな視点で仕事をしていれば、数年後には間違いなく代えの効かない人になっています。自分の電通時代を振り返ると、楽しく仕事しているときよりも、苦しんでいるときの方が、明らかに成長していたと断言できます。あなたがいま苦しみながら試行錯誤しているのであれば、あなたはいままさに成長している可能性が高いです。
③自分なりの成長の定義をしておくといい。
電通時代、「今の部署では成長実感を感じられないんですけど」と相談にくる若手に、僕は質問していました。「あなたにとって成長の定義とは?」。すると「うーん、それは考えたことがなかったですね」という人が多かったです。成長しなきゃ、成長しなきゃ、と焦るわりに、自分がどうなったら成長したことになるのかについて、考えが至っていない。それでも僕と話をしながら「成長とは何か?」という問いに向き合い、自分なりの定義を見出した人は例外なく、グングン伸びていきました。「成長」の解像度が上がり、何をめざせばいいのか、そのために何をすればいいのか、がわかりやすくなったのでしょうね。ちなみに僕にも成長の定義はあります。それは「初めて出会った問題から逃げずに、解決できること」です。東進ハイスクールの志田先生の名言に「やったことがある問題を解けるっていうのは、数学じゃない」というものがありますが、それにインスパイアされました。仕事に限らず、プライベートも含めて、いろんな問題が降りかかってくるのが人生です。その問題の中でも、人生で初めて出会う問題に対して逃げずに立ち向かい、それなりに解決できたかなというとき、あ、俺成長したかもと思います。そうそう、成長実感って、成長しているまさにそのときに感じるのは難しいですね。実際は成長してるんだけど、何年か後になって成長による成果が出たときに初めて、あ、自分は成長したんだと感じるものなんじゃないかと思います。少なくとも僕の場合はそうでした。成長実感は振り返ることでしか実感できないので、成長実感それ自体を目的にしまうと、詰んでしまう気がします。ちょっと怖い話ですが、そう思います。
電通時代、新年度が始まる4月になると「またひとつ年次が上がってしまった。また後輩が増えてしまった。俺は去年より成長してるんだろうか?」と思い悩んだものです。そんな自分を思い出しながら、成長実感について書いてみました。最後までお読みいただき、ありがとうございました。あなたの人生にとって少しでもプラスになる情報をお届けできたらうれしいです。ではまた。
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