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「このマンガを読め!2021」 第1位『高丘親王航海記』を読んでみたらすごかった。

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高丘親王航海記』は、澁澤龍彦さんの遺作となった同名小説を近藤ようこさんがコミカライズしたもの。9世紀に実在した高丘親王の、天竺への旅を描いた全4巻の冒険記です。「THE BEST MANGA 2021 このマンガを読め!」で第1位になるなど話題になったので、読んだ方も多いのではないでしょうか。近藤ようこさんは、『見晴らしガ丘にて』で第15回日本漫画家協会賞・優秀賞、『五色の舟』(津原泰水原作)で第18回文化庁メディア芸術祭・マンガ部門大賞を受賞。『戦争と一人の女』(坂口安吾原作)、『夢十夜』(夏目漱石原作)、『死者の書』(折口信夫原作)など、日本文学のコミカライズでも定評のある方です。

「天竺」という特別な場所。

高丘親王は幼い頃、父である平城天皇の寵姫であった藤原薬子から天竺の話を聞かされます。

薬子曰く

天竺ではなにもかもが
わたしたちの世界とは反対なのです

わたしたちの昼は天竺の夜

わたしたちの夏は天竺の冬

わたしたちの上は天竺の下

わたしたちの男は天竺の女

天竺の河は水源に向かってながれ
天竺の山は大きな穴みたいにへこんでいるの

高丘親王航海記I 儒艮Ⅱ

インターネットで検索すれば世界中の画像や映像が瞬時に出てくる現代とは違います。ブッダの生誕地で仏教発祥の地である天竺は、誰も行ったことがなく、謎に包まれた場所です。当時の日本人にとって交易のあった唐(中国)のはるか彼方ですから、伝聞と想像によってイメージがつくられていたのでしょう。大人ならまだしも、幼い子どもにとって薬子の話は計り知れないインパクトがあったのだと思われます。

不思議な生き物、いっぱい出てきます。

薬子の影響で、長年彼の地への憧憬を抱いていた高丘親王は、67歳にして天竺を目指して中国の広州を出発。占城(ベトナム)、真臘(カンボジア)などを巡り、さまざまな不思議な出来事や生き物に出会います。原作を読んでおらず予備知識のなかった僕は、「えっ?そういう物語なの?」と、ちょっと虚を突かれました。

  • 人の言葉を話す儒艮(ジュゴン)
  • 人の言葉を話す大蟻食い
  • 人の言葉を話す猿
  • 半人半鳥の女
  • 良い夢を食べると芳香を放つ糞を出す獏
  • 犬頭人

などなど。すべては高丘親王の夢の中の出来事なのか?そんな気にもさせられる、幻想的な物語が展開されます。

見たいものがある、行きたい場所がある、という幸せ。

移動手段や情報伝達技術の発達により、誰も見たことがないものや、誰も行ったことがない場所は、昔に比べるとだいぶ減ってきました。未知の世界に対する好奇心は人間の根源的欲求ですから、見たいものがある、行きたい場所がある、というのは、それだけで幸せなことですよね。自分にとっての天竺のような場所はどこなんだろう?そんなことを考えさせられました。最後までお読みいただき、ありがとうございました。あなたの人生にとって少しでもプラスになる情報をお届けできたらうれしいです。ではまた。

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