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サイゼリヤは、店長に売り上げ目標を課していない。サイゼリヤの強さの理由3選

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ほぼ毎週末、家族でサイゼリヤに行きます。イトーヨーカドーの中にあるサイゼリヤ。目の前にゲームコーナーがあり、子どもの目当てはそちらなのですが、家族そろって美味しいご飯をなるべく安く食べたいというのが僕の目当てです。毎週ほぼ同じメニューを食べるので、正直言って若干飽きているのですが、飽きてるんだけどこれはこれで美味しいという不思議。サイゼリヤ美味しい。高級イタリアンも美味しい。僕はどちらも美味しいと思います。

それにしても、いつ行っても混んでます。うちの近くのサイゼリヤがとりわけ繁盛店なのかもしれませんが、空いているサイゼリヤを見たことがありません。壁に貼ってあるアルバイト募集の時給をみると、結構高いですよね。アルバイト業界の中でも高給な方ではないでしょうか。アルバイトに高いお金を払えるということは、儲かっているということです。こんなに安いのに、どうやって儲けてるんだ?客単価は低いけど、回転率が高いので儲かってるのかな?もしくはいい人材を獲得するために、あえて高めに設定してるのかな?なんて思いながらAmazonで検索したら、この本『サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』に出会いました。

サイゼリヤ創業者の正垣泰彦さんが2016年に出した本です。読んで納得。なぜこの低価格で美味しい料理を提供できるのか。なぜこんなにお客さんが詰めかけるのか。なぜアルバイトに高い時給を出せるのか。なぜメニューが固定されていて、しかもたまに減ってしまったりするのか。などなど、僕が感じていた疑問の多くが解けました。サイゼリヤはすごい企業なんだろうと思ってはいましたが、本当にすごかった。出版から10年経っているので、情報的に古くなっているものもあるかもしれませんが、僕が特に感銘を受け、サイゼリヤの強さの源泉はここにあると感じたことを3つご紹介します。

①サイゼリヤは、店長に売り上げ目標を課していない。

ん?えっ?本を読んでいても二度見することってあるんですね。個人的に一番衝撃を受けたのがこれでした。店長といえば、一国一城の主です。当然、現場の最高責任者として、売り上げから利益率からあらゆる数字を課せられているのだと思っていましたが、違いました。

店の売り上げは「立地」「商品」「店舗面積」で決まる。売り上げが悪くなるとすれば、商品開発をする本社の責任で、店長のせいではない。

まあ、言われてみればそうですけどね。その考え方はロジカルだし共感できるけど、じゃあ店長は何をする人なの?店長って売り上げを上げるためにがんばる人じゃないの?と思いながら読み進めると、店長の役割は次のように規定されていました。

サイゼリヤの店長にとって最重要の仕事は、過去の売り上げ推移から予測される来店客数と、店舗スタッフの能力から算出される1週間単位のスタッフの総労働時間内で、月曜日から日曜日までの人員配置をきめ、それを守ることだ。

みんなが、より楽に仕事をできるようにする方法を考える。これがサイゼリヤの店長の仕事である。無駄なことをやめれば、体は楽になり、効率よく働ける。だから、効率化とはいかに楽をするかを考えるということだ。

つまり、売り上げを上げるために店舗スタッフに鞭打って働かせるのではなく、店舗スタッフが楽に働ける環境をつくるのが店長の仕事であると。結果的にそれが店舗の売り上げや利益を上げるのだそうです。そういう視点で仕事をしていると「この作業の行程はこういう風に変えた方が店舗スタッフは楽になるはず」という改善点が見えてくるそうで、それを経営本部に上申して採用されるようになってくると、店長から上のステージに行くそうです。「店舗スタッフがいかに働きやすい現場をつくるか」「いかに改善していくか」について、日本中のサイゼリヤの店長たちが毎日毎日試行錯誤しているわけですね。うーむ、これがサイゼリヤの強さか。すべての業界にそのまま当てはめることは難しいと思いますが、「経営の責任と現場の責任を明確に分けていること」は参考になると思いました。

店長の仕事に話を戻します。店長の仕事は一言でいうと「現場の効率化」ですが、「店長は現場を効率化しろ」と言われるのと、「店長は店舗スタッフが楽に働けるようにしろ」と言われるのでは、受ける印象とモチベーションが変わってくるのではないでしょうか。そこで働く人たちの心を大切にすることが大前提になっている感じがいいですよね。それ以来、サイゼリヤに行くと、スタッフの皆さんの仕事ぶりを観察するようになったのですが、たしかに皆さんテキパキと無駄なく動いているように見えます。ちなみに「テーブルを拭く」とは「布巾をテーブル上で左右に4回往復させること」というように、あらゆる行為が具体的に決められているそうです。たしかにスタッフの皆さんが「これはどうすればいいんだっけ?」と迷っていたり、「これはどうすればいいでしょうか?」と先輩に質問しているシーンを見たことがありません。

②サイゼリヤでは1年間に店長の5%が降格し、店長の補佐に戻る。

店長には売り上げ目標が課されないということで、甘い世界なのかと思ったら、そういうわけでもないようです。

サイゼリヤでは1年間に店長の5%が降格し、店長の補佐に戻る。

前述の店長の責任をうまく果たせなかった人は降格してしまうのですね。5%は、100人中5人ですから、まあまあ多い数字ではないでしょうか。ただ、サイゼリヤにおける降格は、普通の企業の降格とは少し様子が違います。

そこから店長に再度、昇格する人は昔の仕事の進め方を反省しているから、前とは違って格段に仕事ができるようになる。そのうえ、仕事ができない人たちの気持ちも分かるから指導もうまい。

降格という言葉には落第というイメージがあります。一般的に降格と聞くと、出世コースから脱落し、その組織での未来は閉ざされてしまったんだなと感じます。でもサイゼリヤはそうではありません。プロ野球にたとえると、1軍で成績が振るわない選手を一度2軍に落とし、調整してからまた上がってこい、みたいな感じです。「降格=終了です」ではなく「降格=再チャレンジせよ」というメッセージ。これはいいですね。降格後に再度店長に昇格した人は、技術的にも精神的にも前回よりもパワーアップし、より強力な戦力として働いていく。プロ野球にたとえましたが、サイゼリヤは社員の皆さんをプロとして扱っているんだと思います。だからこそ、ダメなら落ちる、よければまた上がる。というフェアな環境にしているのではないでしょうか。

③大切なのは、目標として追う数値を1つに絞ることだ。

サイゼリヤの理念に、人のため・正しく・仲良くというものがあります。人のためとは、人の役に立ちたいと考え、行動すること。正しくとは、「人のため」「仲良く」という正しい方向に向かって、努力すること。「仲良く」とは、みんなで幸せになるために、お互いに助け合うこと。なんだか小学校の壁に貼られている標語のような感じですが、言うは易く行うは難しです。組織が大きくなればなるほど、関わる人間が増えれば増えるほど、この基本的なことが難しくなるんですよね。「自分の出世のために・正しくないやり方で・人を蹴落としていく」という人を僕はたくさん見てきましたが、そういう人がいる組織は間違いなく停滞します。あいつがそれやっちゃうなら俺も、というように自分のために動く人が増え、そういう人が評価されてしまったりして、正しく人のためにやっている人のモチベーションが下がって辞めていく。そして外部の協力会社からも、あの会社のためにがんばろうという気持ちがなくなって見放され、優秀なスタッフをつけてもらえなくなります。恐ろしいことです。

さて、「人のため」という言葉を掲げているサイゼリヤですが、これを精神論だけで終わらせていないところがすごいところです。

「人のため」とは、お客様に喜んでいただけたかを計るバロメーターを客数と捉えて、客数を増やすことを最優先で考えよう、という意味。

「すべてはお客様のために」みたいな標語を掲げている会社は多いと思いますが、それをどう計るか、というところまで突き詰めている会社は少ないのではないでしょうか。サイゼリヤの場合は「客数増」です。「お客様が喜んでくれたら、また来てくれる。喜んでくれた人が多いほど、たくさんの人がまた来てくれる。つまりそれは客数で計れるはずだ」という考え方ですね。子どもでもわかるシンプルさと、大人でも納得できるロジックです。こういうシンプルで強いロジックを組み立てられたら強いですね。結果、客数はどんどん伸びているようです。サイゼリヤは「世の中の人にとってなくてはならない店舗を10,000店つくること」というビジョンを掲げていますが、これも会社を大きくしたいという経営側の都合ではなく、「人のため」「客数増」の延長線上にあります。ちなみにお店のパンフレットによると、2025年8月時点で、世界に直営1,682店舗を展開し、1年間で約3億人のお客様をお迎えしているとのことです。ちなみにマクドナルドは、日本国内だけで約3,000店舗、年間約14億人のお客様にご利用いただいているとのことです。上には上がいます。どちらももはや食のインフラですね。

追う数値は1つに絞ること。2つや3つに増やすべきではない。人間は一度にいくつもの目標を追えるほど器用ではないからだ。

サイゼリヤでは、あらゆる立場のあらゆる社員が「客数増」のために仕事をしています。出店の場所を探す社員も、メニュー開発をする社員も、店舗で働く社員も、人事評価システムをつくる社員も、経営戦略をつくる社員も、すべての社員が「これをすると客数増につながるだろうか」という視点で仕事をするということです。組織が大きくなって社員が増えても、全員がこの1点に向かっていく組織なのです。

「人のため」「お客様のため」から転じて、「お客様との感動エピソード」みたいなことを集めてブランディングしたり社員のモチベーションを高めるような施策をやっている会社はたくさんありますが、サイゼリヤにとってそこは本筋ではない印象を受けました。「サイゼリヤは、美味しいイタリアンを安く食べられる楽しいところ。それ以上でもそれ以下でもない」と。自分たちの資源を分散させず、自分たちの強みを最大限発揮できる場所に集中しているからこそ、サイゼリヤは多くの人に愛され、社会に必要とされる存在になっているのですね。ちなみに今回このブログを書くにあたり、サイゼリヤのホームページを見ていたら、『サイゼリヤの法則』という本が紹介されていました。2024年の本ですから最近ですね。これから読みますが、おそらく本質的な部分では似たようなことが書いてあるのではないかと予想しています。今回ご紹介した『サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』は、飲食業界に限らず、あらゆる業界で仕事をする皆さんの、特にマネジメント層の方にお勧めしたい一冊です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。あなたの人生にとって少しでもプラスになる情報をお届けできたらうれしいです。ではまた。

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